第5章
色の基本とカジュアルファッションでの活用


【この記事の要約】 ※この記事は約8分で読めます。
課題: 「どの色とどの色を合わせればいいか分からない」という悩みは、色の「役割」を決めていないから発生する。
解決策(基本色): メンズファッションのベーシックカラーは、「モノトーン(白・黒・グレー)」と「ネイビー・ベージュ」の5色で十分。各色の役割や与えるイメージを理解すると、一層扱いやすくなる。
論理(比率): 配色は「ベースカラー7割:アクセントカラー3割」の面積比を守るだけで、自動的にバランスが整う。
結論: 色彩センスが無くても、まずはこの5色で土台を作り、慣れてから「差し色」を加えるのが最短ルート。
第1章では、コーディネートの3要素の一つとして「色・素材」を挙げ、「ベーシックカラー」「7:3の黄金比」について触れました 。 本章では、その理論をさらに深掘りし、明日からの服選びで迷わないための「色彩のロジック」を解説します。
1.なぜ「色」で失敗するのか?
「このシャツの色、綺麗だから」 「今年の流行色だから」
こうした理由で服を選び、いざ手持ちの服と合わせようとして失敗した経験はありませんか? ファッションにおける色の役割は、単体での美しさではなく、「全体の調和」にあります 。
ビジネス資料作成において、むやみに多くの色を使うと要点がぼやけるのと同様、コーディネートも色数が多すぎると「散らかった印象」を与えます。 論理的なコーディネートにおいて、色は「センス」ではなく、「ルール」で管理していく事になります。
2.メンズファッションの5つの「ベーシックカラー」
カジュアルに限らず、メンズファッションのベーシックカラーは「ホワイト、グレー、ブラック、ネイビーブルー、ベージュ」の5つの色とされています。まずはこの5色に集中し、その他の色は、これら5色を揃えた後の「応用」と考えてください 。
なぜこの5色がベーシックカラーなのか?
これらは、色彩の世界で「無彩色(白・黒・グレー)」あるいは「アースカラー(自然界にあるネイビーブルー・ベージュ)」に分類されます。原色の赤や黄色のような強い個性を持つ色とは異なり、お互いに主張し合わないため、どのように組み合わせても色が喧嘩せず、視覚的にまとまりが生まれます。
※注:メンズファッションでは、(ビビットな青ではない)アースカラー系の淡いブルーをネイビーブルーの延長線上の色として扱うことがありますので、ご注意ください。
ベーシックカラーを選ぶ3つのメリット
メンズファッションにおいて、この5色を中心に服を選ぶことには、以下の利点があります。
コーディネートで失敗しにくい(時間短縮)
これら5色はどの色同士を組み合わせても相性が良いため、「色が合わない」という失敗が物理的に起こりにくいです。その為、毎回鏡の前で悩むことなく、短時間で整った服装を完成させることができます。
清潔感」と「信頼感」を与える(対人印象)
カジュアルなファッションでも「清潔感」は重要な要素です。この5色はスーツや制服にも使われる色であり、相手に「きちんとした大人」「誠実な人」という印象を無条件で与えることができます。ビジネスから休日まで、あらゆる場面で好印象につながります。
長く着られて経済的(コストパフォーマンス)
流行の色や派手な柄は、すぐに飽きが来たり、着ていると目立ちすぎてマイナスになる事もあります。一方、ベーシックカラーは流行に左右されず、少ない服の枚数でも多様な着こなしが可能になるため、無駄な出費を抑えられます。
各色の役割と与えるイメージ
それぞれの色が持つ効果を知ると、より選びやすくなります。
ホワイト(白):【清潔感】 軽快さ、抜け感、爽やかでクリーンな印象を作ります。
ブラック(黒):【引き締め】 全体をシャープに見せ、都会的でモダンな雰囲気を作ります。
グレー(灰色):【知性】 白と黒の中間色です。他の色の強さを和らげ、知的で穏やかな印象。
ネイビーブルー(紺):【誠実】 日本人の肌色と相性が良く、信頼感・品格・冷静さを与える色です。
ベージュ:【安心感】 柔らかく優しい印象。緊張感をほぐし、親しみやすさやリラックスした印象を演出。
【図:5色のベーシックカラー】


3.失敗しない配色の「3つのフレームワーク」
5色のベーシックカラーを手に入れたら、次は「組み合わせ」です。ここでは、誰でも再現可能な3つのテクニックを紹介します。
① 「7:3」の面積比ルール(ベース&アクセント)
第1章で紹介した最も基本的なルールです 。
ベースカラー(70%): コート、ジャケット、パンツなど面積の広いアイテム。ここには必ず「ネイビー」「黒」「グレー」「ベージュ」などの落ち着いた色を使います。
アクセントカラー(30%): インナー、靴、マフラーなど。ここに「白」で抜け感を出したり、他の色を少し加えたりします 。
② ワントーン・グラデーション(同一系統色)
同じ系統の色で、明るさ(明度)や鮮やかさ(彩度)を変えて組み合わせる手法です 。
例:「ネイビーのジャケット」×「水色のシャツ」×「濃いデニム」
メリット:統一感が生まれ、足長効果などのスタイルアップも期待できます。最も知的に見える組み合わせです。
③ サンドイッチ効果(色の挟み撃ち)
「トップス」と「シューズ(または帽子)」の色を揃え、間の「パンツ」を別の色にするテクニックです。
例:「黒のジャケット」×「ベージュのパンツ」×「黒の靴」
メリット:上下に同じ色を配置することで視線が安定し、まとまりが生まれます。
【図:配色の3つのテクニックの活用例】


4.「差し色」はスパイスである
ベーシックカラー5色だけでコーディネートは十分に完成しますが、少し変化が欲しい時に使うのが「差し色」です 。 赤、オレンジ、緑などの鮮やかな色(有彩色)は、視線を集める効果があります 。
これは料理における「スパイス」と同じです。 スパイス(差し色)がメインになってはいけません。あくまで全体の5%〜10%程度、例えば「マフラー・ストール」「バッグ」などの小物、あるいは「インナーのロゴ」などで小さく取り入れるのが、大人のマナーです 。
5.まとめ:手順を押さえて、ロジカルに組み立てる
色の世界は奥深いですが、ロジカルにカジュアルファッションを組み立てる際には、以下の手順で機械的に決めてしまって問題ありません。また、はじめのうちは「使う色は2~3色まで」に留めると、コーディネートがまとまりやすくなります。
ベースを選ぶ: 今日は「黒」にするか、「ネイビー」にするか、今日のメインのベーシックカラーを決める。
比率を整える: 全身が暗くなりすぎないよう、必ず「白」か「グレー」か「ベージュ」を混ぜて軽快さを出す。
なじませる: 靴やバッグの色を、服のどこかの色とリンクさせる(サンドイッチ)。
まずはこの手順に従って、クローゼットの中を「5色のベーシックカラー」で整えてみてください。それだけで、毎回の服選びの時間は大幅に短縮され、鏡の前での迷いは減るはずです。
慣れてきたら、「1.ベースを選ぶ」色を「黒・ネイビー」以外の色(白、グレー、ベージュ)に広げて、組み合わせパターンを広げてください。
次章(第6章)では、色の次に重要でありながら見落とされがちな要素、「素材(マテリアル)」について解説します。