第8章

シルエットその2 洋服の階層構造(レイヤリング)

【この記事の要約】 ※この記事は約7分で読めます。
  • 結論:メンズファッションのコーディネートは、ランダムな重ね着ではなく、「トップス3層 + ボトムス」という明確な階層構造(レイヤー)で成り立っている。

  • 構造:トップスは「①インナー(ベース)」「②ミドル(中間)」「③アウター(外殻)」の3層で構成される。

  • メリット:「夏:1層」「春・秋:2層」「冬:3層」の構造を理解することで、季節に応じたコーディネート可能になる。

1.全身の基本設計図:トップスとボトムス

コーディネートを「なんとなく」で組んでしまうと、チグハグな印象になります。まずは家を建てるのと同じように、基本構造を理解しましょう。ファッションは、大きく分けて2つのエリアで構成されます。

① トップス(上半身)

  • 役割:コーディネート全体の印象を決め、気温調節を行うメインエリア。

  • 構造:複数の服を重ねる「多層構造」になることが多い。

② ボトムス(下半身)

  • 役割:下半身を守り、全身を支える土台。

  • 構造:メンズファッションでは基本的にはパンツ1枚の「単層構造」。

初心者が躓きやすいのは、圧倒的に複雑な「トップス(上半身)の重ね方」です。ここを分解していきます

2.トップスの「3層構造(レイヤード)」

上半身のコーディネートは、役割の異なる3つの層(レイヤー)を積み重ねる作業です。これを「レイヤリング・システム」と呼びます。アウトドアウェアなどでよく採用されている機能視点の考え方で、カジュアルファッションでも活用できます。

第1層:インナーウェア(Inner wear)/ ベース

  • 役割:コーディネートの土台。室内で上着を脱いだ時の「顔」にもなる。

  • 主なアイテム:Tシャツ、オックスフォードシャツ、ポロシャツなど。

  • 選び方:肌に比較的近いため、着心地が良く、他のアイテムと喧嘩しないシンプルなものを選ぶ。

第2層:ミドルウェア(Middle wear)/ 中間着

  • 役割:保温性の確保と、色・素材によるアクセント。ファッションの奥行きを作る調整役。

  • 主なアイテム:ニット(セーター)、カーディガン、パーカー、ベスト、インナーダウンなど。

  • 選び方:インナーの上に重ねても着膨れしない素材感や、アウターを脱いだ時に様になるデザインを選ぶ。

第3層:アウターウェア(Outer wear)/ 外殻

  • 役割:防風・防寒・雨風からの保護。そしてコーディネート全体の「第一印象」を決定づける主役。

  • 主なアイテム:コート、ダウンジャケット、ブルゾン、テーラードジャケットなど。

  • 選び方:最も外側にくるため、少しゆとりのあるサイズ感が必須。

※第0層:アンダーウェア(Under wear)/ 肌着

  • 役割:インナーの下、肌に直接触れる層です。汗を吸い、服への汚れを防ぐ衛生担当。

  • 鉄則:「外からは絶対に見せない」のが大人のマナー。首元から肌着が見えないよう、深めのVネックなどを選びましょう。(本サイトではファッションアイテムとしては扱わないので詳細は割愛しますが、必須の装備です)

【図:トップスの3層構造】

3.季節による階層の変化(構成ルール)

この3層構造は、季節や気温(季節性変数)によって組み合わせを変えることで、一年中運用可能です。 シンプルな夏から多層な冬へと、積み重ねていくイメージを持ちましょう。

① 夏の運用(1層構造)

暑い夏は、アウターとミドルを排除した最小構成です。

  • 最小装備:インナーウェアのみ 例:ポロシャツ 1枚、Tシャツ 1枚

  • 注意点:1枚しか着ないため、サイズ感や素材の良し悪しがダイレクトに伝わります。第7章で学んだ「ジャストサイズ」が最も重要になる季節です。

② 春・秋の運用(2層構造)

気候が穏やかな時期は、「3層から1つを抜く」引き算の考え方を使います。

  • パターンA(インナー + アウター)例:Tシャツ + テーラードジャケット

  • パターンB(インナー + ミドル)例:シャツ + カーディガン

    ※パターンBでは、ミドルがアウターの役割を担います。

③ 冬の運用(3層構造)

寒さが厳しい時期は、3層すべてをフル稼働させます。3層構造では、2層構造で「アウター」にあたる一部のアイテムがミドルの位置づけに変化します。

  • フル装備(インナー + ミドル + アウター) 例:シャツ + ニット + コート

    ※間に空気の層(ミドル)を作ることで保温効果が生まれ、暖かく過ごせます。また、立体感による小顔効果・スタイルアップの効果も期待できます。

【図:素材の「光沢」と「マット」の違いの例】

【図:トップスのサイズ感の比較】

4.組み合わせの実例

これまでの理論(第7章のサイズ、第8章の階層)を使って、具体的な組み合わせ例を見てみましょう。

例1:アクティブな「春の休日スタイル」

  • Layer 3 (Outer):スウェットパーカ(※パーカはアウター兼ミドルの役割も持つ)

  • Layer 2 (Middle):(なし)

  • Layer 1 (Inner):ボーダーTシャツ

  • Bottoms:ジーンズ

  • 解説:2層構造。パーカのジップを開けて、中のボーダー柄を見せることで、春らしい軽快さを演出します。

【図:アクティブな「春の休日スタイル」】

例2:知的で落ち着いた「冬のドレス・カジュアル」

  • Layer 3 (Outer):チェスターフィールドコート

  • Layer 2 (Middle):テーラードジャケット(秋冬用)

  • Layer 1 (Inner):クルーネックセーター(薄手のウール)

  • Bottoms:スラックスパンツ

  • 解説:ジャケットの中を襟の無いニットにすることで、防寒性と柔らかい印象をプラス。冬場のドレス・カジュアルの定番コーディネートです。

【図:知的で落ち着いた「冬のドレス・カジュアル」】

5.まとめ:レイヤリングの注意点(厚みの順序)

重ね着をする際の大原則は、「内側は薄い服、外側に行くほど厚くする」ことです。 インナーより厚いミドル、ミドルより厚手のアウターを選ぶのが物理的な正解です。
逆(中にボリュームのある服、外に薄い服)にすると、動きにくく、シルエットも崩れやすくなってしまうので、注意が必要です。

次章では、いよいよシルエット編の完結。「Iライン」「Yライン」といった、全身のシルエット作りについて解説します。これを知れば、コーディネートの全体像をコントロールできるようになります。