第9章
シルエットその3 全体のライン(I・Y・A・H)


【この記事の要約】 ※この記事は約7分で読めます。
結論:お洒落に見えるかどうかは、遠目から見た時の「全身の外郭(シルエット)」で8割決まる。
構造:メンズファッションのシルエットは、アルファベットの形状になぞらえて「I」「Y」「A」「H」の4パターンに分類される。
メリット:初心者はまず、最も清潔感がありスタイルが良く見える「Iライン」と「Yライン」の2つだけを覚えれば、コーディネートで迷うことがなくなる。
1.コーディネートの最終仕上げ:シルエットとは?
「高い服を着ているのに、なぜか野暮ったい」
「シンプルな服なのに、あの人はなぜかスタイリッシュに見える」
この差を生む正体が「シルエット(全体のライン)」です。
シルエットとは、詳細なデザインや色が見えない距離からでも判別できる「影(Shadow)」のようなもの。人は他人のファッションを認識する際、まずこの「全体の形」を無意識に判断し、その後に「色」「素材」などの詳細を見ています。
つまり、どんなに良い服を着ても、全体のシルエットが整っていなければ「コーディネートがうまくいっていない」状態になります。
このシルエット作りがカジュアルファッション・コーディネートの最大の難関ですが、これをロジカルに構築するためのフレームワークが、「アルファベット・ライン(アルファベットの形になぞらえた、洋服の組み合わせのシルエット)」です。
トップスとボトムスのボリューム(太さ)の組み合わせによって、以下の4つに分類されます。
Iライン(細 × 細)
Yライン(太 × 細)
Aライン(細 × 太)
Hライン(太 × 太)
2.メンズファッションの基本「4つのライン」
それぞれの特徴と、相手に与える印象(メリット・デメリット)を解説します。
① I(アイ)ライン:基本中の基本
組み合わせ:[ジャストサイズのトップス] × [細身のボトムス]
特徴:アルファベットの「I」のように、上から下までスラリとした直線的なライン。
印象:誠実、清潔感、真面目。メンズスーツスタイルの延長。
メリット:最も万人受けし、誰でもスタイルが良く見えます。ビジネスからデートまであらゆるシーンに対応可能。
② Y(ワイ)ライン:体型補正の切り札
組み合わせ:[ボリュームのあるトップス] × [細身のボトムス]
特徴:上半身にボリュームを持たせ、下半身をスッキリさせることで、アルファベットの「Y」のような逆三角形を作るライン。
印象:男らしい、スタイリッシュ、大人っぽい。
メリット:視線が上に集まるため、「身長を高く見せる」「お腹周りを隠す」「足を細く見せる」といった補正効果があります。ロングコートやダウンジャケットを着る秋冬の主役です。
③ A(エー)ライン:安定感とリラックス
組み合わせ:[ジャストサイズのトップス]または[Aラインのコート] × [太めのボトムス]
特徴:下半身に向かって末広がりになる「A」のような三角形のライン。
印象:安定感、男性的、リラックス。
注意点:重心が下がるため、足が短く見えやすいのが難点。Aラインのコートやワイドパンツを着こなす必要があり、コーディネートの難易度が上がります。
④ H(エイチ)ライン:昨今のトレンドだが難易度高
組み合わせ:[ボリュームのあるトップス] × [太めのボトムス]
特徴:上下ともにダボっとした、寸胴な「H」のようなライン。
印象:トレンド感、ストリート、個性的。
注意点:昨今の流行(オーバーサイズ)ですが、初心者には勧めにくいラインです。「たまたまうまくいく」場合もありますが、上手にバランスを取らないと「自分に合うサイズを知らない、だらしない人」になりかねません。


【図:トップスの3層構造】
3.目指すべきは「I」と「Y」の2つ
ファッション初心者に限らず、多くの男性が「最短で」コーディネートを上手に組み立てる為の戦略は明確です。
まずは「IラインとYラインの2つだけ」に絞って、コーディネートを組み立ててください。なぜなら、この2つはボトムスが共通(細身~テーパード)なので、パンツのシルエットを固定できる為です。
戦略1:通年の基本「Iライン」
第7章で推奨した「ジャストサイズのトップス」と「テーパードパンツ」を合わせれば、自動的にこの「Iライン」が完成します。
夏:Tシャツ × テーパードパンツ
春秋:ジャケット × テーパードパンツ
戦略2:秋冬と応用の「Yライン」
トップスにボリュームが出る季節や、体型を隠したい時に使います。ボトムスは「Iライン」のままでOKです。
冬:ロングコート × テーパードパンツ
応用:オーバーサイズニット × テーパードパンツ
【重要】 ボトムスを固定する
「お洒落な人は毎回違う格好をしている」というのは誤解です。
ロジカルにお洒落な人は、「ボトムスを細身(テーパード)に固定」し、トップスのボリュームを変えるだけで「I」と「Y」を行き来しています。これが、少ないリソース(服の量・選ぶ時間)で効率的に、安定してコーディネートを完成させるための極意です。
【図:素材の「光沢」と「マット」の違いの例】


【図:IラインをもとにしたYラインの組み立て】
4.シルエット・マトリクス(まとめ)
最後に、これまでの「サイズ」「階層」「ライン」の関係をまとめたマトリクスを提示します。あなたが明日着る服を選ぶ際、この表のどこを目指すかを意識してください。
迷ったら、まずは「Iライン」か「Yライン」を選択し、下半身をスッキリさせる。これさえ守れば、シルエットが大きく崩壊することはあり得ません。これがロジカルなファッションコーディネートの鉄則です。
(特にHラインはオーバーサイズのトップスと太めのボトムスが必要で、I、Yラインとは異なるシルエットのアイテムを多数揃えていかなければいけなせん。コーディネートの難易度が上がると共に、被服費用も増加します。)
【図:素材の「光沢」と「マット」の違いの例】


【図:トップス・ボトムスの各ラインと全体のシルエットの関係】
第10章では、ここまで解説した第1章~第9章のすべての理論を統合した「コーディネート理論のまとめ」を行います。